光線療法について

ビリルビンとは? 

ビリルビンとは、体内の赤血球中にある分子で、赤血球が分解されると血中に流出します。赤血球の分解は体内で常に起こっており、ビリルビンは肝臓で分解されるので特に問題になりません。ただ、新生児の場合は成人と異なります。胎児の間は、母体から送られてくる多量の赤血球から酸素を得ていますが、出生と同時にその余分な赤血球を分解するためビリルビンが蓄積します。新生児は肝臓の機能が未発達で、余分なビリルビンを分解することが出来ず、脂肪組織中に蓄積するため皮膚が黄色に変わります。通常の場合、生後3~4日間はビリルビンの値が上がりそれをピークとした後少しずつ数値が下がっていきます。新生児の中には、あなたの赤ちゃんのようにビリルビンの数値が上がりすぎて光線療法が必要となる場合もあります。光線療法を開始すると赤ちゃんのビリルビンは2~3日中に普通の数値にもどります。治療をせずビリルビンが高いまま放置されると、脳に障害がでる可能性もあります。

 

光線療法とは?

光線療法とはその名の通り光を当てて治療することです。特別な光線を当てることによってビリルビンの排泄が容易になります。光線の助けで肝臓への負担が減り、ビリルビンを体外へ排泄できるようになります。光線療法は医学的に立証された治療法で、25年以上も使用されています。つい最近までは光線療法は病院内でしか出来ない治療法でしたが、現在では持ち歩きのできるポータブル型のものが開発され自宅での治療が可能となりました。

この Wallaby 光線器械は安全で効果的な家庭治療を可能とするものです。この器械は、光を発するボックス、赤ちゃんに光線を当てるパネル、パネルカバーから成っています。カバーは、赤ちゃんの肌触りをよくするとともにパネル自体を守る役割を持ち、赤ちゃんの身体に巻きつきやすいデザインとなっています。

 

器械を使う前に

器械が自宅に配達されたら簡単に使い方の説明を受けて下さい。スタッフはまず器械に故障がないか点検し、ご両親が器械の使い方を理解できたかどうか確認します。医師より使い方の頻度などを指示されている場合には、その確認をしてください。以下のページにステップごとに使用法の説明を記しました。絵を参照しながら説明書を読み光線療法を開始して下さい。

質問がある場合は、病院、光線器械を配達したスタッフ、または、製造会社にご連絡ください。

光線治療中は赤ちゃんの眼をカバーした方がいいですか?
パネルにはカバーがついていますので、赤ちゃんの眼をカバーする必要はありません。赤ちゃんの眼にまぶしい光をあてることは好ましくありませんので、パネルのカバーをはずす時はスイッチを切ってからはずすようにして下さい。

光線のレベルのスイッチはどう設定したらいいですか?
光線の強さは医師が判断します。その指示に従って、治療開始からレベルをそれに合わせてスイッチを設定して下さい。(通常は、強い方に設定してください。)

赤ちゃんに当てているパネルから光が出ず、器械からブザー音がしています。どうしたらいいですか?
光線のランプが焦熱すると器械からアラームが鳴るシステムになっています。ランプの取り替え方は後に説明書 (安全注意点欄) に載っていますのでそちらをお読み下さい。

パネルカバーはどの位の頻度で取り替えるのがいいですか?
カバーは汚れたり濡れたりした時に替えて下さい。使い捨てタイプのカバーはそのまま捨てて、新しいものと替えてください。木綿のカバーははずした後、新しいカバーをつけ、汚れたものは普通に洗濯器で洗って下さい。

パネルが汚れたら、どうやって洗えばいいですか?
スイッチコードをまずボックスからはずし、パネルを食器用洗剤などのマイルドな洗剤をつけたふきんなどで拭いて下さい。水の中にパネルを浸けたり、強力な洗剤などは使わないで下さい。

 

安全注意点

  • 汚れを拭いたり洗ったりする時やランプを取り替えたりする時は必ずスイッチを切ってからにして下さい。
  • 光線療法をしたまま、赤ちゃんをお風呂に入れないで下さい。
  • 器械を不安定な高い場所に置いたり、お風呂や台所など水を使用する近くには置かないでください。
  • 万が一水の中に落ちた場合はまず電源コードを抜いてください。
  • パネルで赤ちゃんを包んだまま歩き回らないで下さい。
  • 最初に点検する時以外は、パネルを赤ちゃんに巻かず電源を入れっぱなしないで下さい。
  • コードやプラグに傷などがついていた場合はそのまま使用しないで下さい。
  • コードは、ヒーター等の熱を帯びた所に置いたり近づけたりしないで下さい。
  • 器械は平らな所に置いて下さい。
  • 空気口を塞がないで下さい。ベビーベッド、カーペットやソファの上ような柔らかい表面に置いたりすると空気口が自然に塞がる場合がありますので注意して下さい。
  • 器械の前面の穴に指や物を入れてはいけません。
  • コードは直接コンセントにつないで下さい。延長コードは使用しないで下さい。
  • パネルをドライヤーなどで乾かしてはいけません。
  • 器械を動かす場合は、電源を切った後10分程おいて冷めてからにして下さい。
  • 光線治療器を野外で使ったり、スプレーを使うような場所では使わないで下さい。
  • 酸素療法を行っている場合は同時に使うのは危険です。
  • ヒューズを取り替える場合、マニュアル指定の物以外は使ってはいけません。

質問がある場合は、光線機器を配達したスタッフか製造会社までお問合せ下さい。

 

機械の使い方

  • 器械は水平な場所に置き、赤ちゃんの居る所から4フィート (約120cm) 以内に置いて下さい。器械の空気口は塞がないよう注意して下さい。器械は、
  • ベビーベッドや授乳時に座るソファーの横のテーブルの上に置き、ヒーターのそばは避けて下さい。器械の前側にあるコードの接続部にパネルをしっかり接続させるのですが、差し込んだ後右側に90度回転させると接続が完了です。電源を三つ穴のコンセント (アースのついたもの) に差し込んでください。なければ工業用の丈夫な延長コードなら使ってもかまいません。
  • パネルにカバーを掛けます。カバーの透けている側を光線の当るほうに向けて下さい。使い捨て用のカバーが汚れた場合はそのまま捨てて、木綿のカバーであれば洗濯機で洗って再度使用して下さい。注意:パネルをきちんと赤ちゃんに巻くことによって、脇の下などの皮膚に炎症がおこるのを妨げることができますので、説明書をよく読んで正しくパネルを使用して下さい。
  • 赤ちゃんにTシャツを着せ、脇の下までくるくるとめくっていって下さい。これは、脇の下とパネルの端のクッションにして、擦れないようにするためです。大きな赤ちゃんや動きが活発な赤ちゃんの場合は、パネルの端をセロテープでおむつにはって固定することもできます。
  • Tシャツを巻いて作ったクッションが丁度脇の下にくるようにして、その上からパネルを赤ちゃんに巻きつけて下さい。カバーの透けている方が赤ちゃんの肌にあたるようにしましょう。使い捨てのカバーには端の空いているほうに2つテープがついていますので、それを貼ってパネルを固定させます。木綿のカバーはマジックテープを使って固定させて下さい。
  • パネルはあまりきつく巻きつけ過ぎず、通気をよくするため赤ちゃんの身体とパネルの間に指が1本入る程度に巻きつけましょう。前述の通り大き目の赤ちゃんや動きの激しい場合はセロテープでパネルとおむつを貼付けても結構です。そうでないとパネルがずれ上がってしまいます。
  • パネルの上から毛布で赤ちゃんを包んだり、大きめの寝巻きを着せても構いません。
  • 光線の強さを調整するスイッチ (器械の右前面) がついている場合は、指示された強さに合わせ (通常は、強)、調整のないものであればオンにするだけです。
  • 光線療法中はいつでも赤ちゃんをだっこして構いません。治療を中断せずだっこや 授乳をして下さい。ただ歩き回ってコードが外れたりしないように気を付けて下さい。

 

新生児用パネルとベストの使い方

  • 使い捨てベストの端からパネルを入れ、付いているテープで固定して下さい。
  • ベストでカバーされたパネルを平たいマットレスなどの表面に置きます。光が放たれる方を上に向け赤ちゃんの背中かお腹どちらかをその上に当て、パネルのコードは赤ちゃんの足の方に向けて下さい。
  • パネルは、赤ちゃんの胴体の中央に巻き、端の部分をテープで固定します。多少のゆるみをもって巻き付けるようにしてください。
  • パネル上から毛布や寝巻きを着せても結構です。
  • 光線の強さを調整するスイッチが付いていれば指示通りに設定してください。そうでない場合は、スイッチをオンにしてください。
  • 治療中もだっこや授乳は普通に続けて下さい。歩き回ってコードが外れないように注意しましょう。

 

記録のつけ方

医師が赤ちゃんの経過を把握できるように、光線療法の様子や赤ちゃんの状態を記録しておきましょう。記録には:

  • 治療時間
  • 赤ちゃんの体温
  • 尿の回数
  • 便の回数と色
  • 母乳/ミルクをいつどれだけ飲んでいるか

治療時間:記録には実際に赤ちゃんに光線をあてている時間数を書いて下さい。器械にはメーターがついているので、スイッチを入れてから切るまでの数字を書いてください。メーターは時間数を1/10単位まで読み取れます。

体温:医師に体温の測定方法と体温の正常範囲を確認してください。正確に状態を知るためには毎回同じ方法で体温を計らなくてはいけません。脇の下で計るのがやり易い場合はその方法でも構いません。

尿の回数:24時間内にオムツは6枚以上濡らすのが普通です。吸収力の良い最近のオムツは本当に尿がでているのかどうか分かりにくいこともあります。そのようなオムツは内側に化学製品が入っていて、尿が出るとそれをゼリー状にするためぬれているのかどうか分りにくくなります。こういった吸収性の良いオムツを使う場合は、おしりとおむつの間にペーパータオルをはさんで下さい。ペーパータオルをはさむと尿がでて濡れた跡がはっきり残り判断し易くなります。尿の回数を記録することで、治療中に赤ちゃんがきちんと必要な水分を取っているか判断できます。

便:光線療法中は赤ちゃんの便の数が増えます。水っぽく、濃い茶色・緑色の便が出ますが、心配いりません。これはビリルビンが分解されているためです。便の頻度が増すことによって脱水症状にならないよう授乳を頻繁に行うよう指導されます。

授乳:新生児は普通3‐4時間毎の授乳が必要です。医師から適切な授乳の間隔について説明してもらって下さい。その指示に従い、授乳の頻度、時間、量を記録して下さい。もし授乳で問題がある場合は、病院に連絡をとりましょう。

血液検査:治療開始後は、皮膚の色だけで黄疸の程度は判断しかねますので、経過観察のための血液検査が必要となります。看護婦が訪問して採血する場合と病院へ行って採血する場合とがあります。採血検査でビリルビンの量と赤ちゃんの状態を調べることができます。

 

Q&A(よくある質問)

Q:光線療法はどの位続けるのですか?

A:治療期間は赤ちゃんごとに違いますが、通常2‐4日程度で医師より指示がでます。毎日血液検査を行いその結果によって判断されます。

Q:治療中に赤ちゃんをだっこしたり授乳できますか?

A:母子のスキンシップは非常に大切ですので、治療中もだっこや授乳が可能なようにデザインされています。普通に赤ちゃんに接するのと同じようにしてください。ただ、お風呂の時だけは治療を中断して下さい。

Q:赤ちゃんが眠っている間も使用していていいのですか?

A:上記の通り眠っている時も含め、普通に生活をしながら治療をつづけてください。パネルカバーは固定されているので、睡眠中もずれる心配はありません。

Q:光線の影響で赤ちゃんの身体が熱くなりませんか?

A:この器械から出る光線は熱くないので心配いりません。

Q:感電の恐れはありますか?

A:パネルからは光線しか出ませんので、感電や熱が伝わることはありません。

Q:パネルで覆われた身体の部分だけ色が違うのは何故ですか?

A:パネルと接触のある部分は光線を直接受けているので、その部分にあるビリルビンから先に分解されていきます。大半のビリルビンは血液中に流れているので、血液が循環することにより順番に光線に当たり分解されます。ビリルビン値が正常範囲に近ずくにつれて、赤ちゃんの皮膚の色も正常に戻ってゆきます。

 

ランプアラーム

器械の中の電球が切れるとアラームが鳴りますが、心配する必要はありません。スイッチをオフにし、下記のランプの取り替え方の指示に従って下さい。

ランプの取り替え方

手持ちの器械、左前面に "Lamp Selector Switch" があれば、以下の指示に従って下さい。

器械左前面の Lamp Selector Switch を強く押して下さい。新しい電球が自動的に入れ替わります。

器械を再度オンにして下さい。パネルから出てくる光線の明るさを確認しましょう。

以前と同じ位の明るさであることを確認後、治療を再開して下さい。パネルの明かりが灯らなかったり暗い場合は、機械の配達元へ連絡して下さい。

手持ちの器械に Lamp Selector Switch が無い場合は、配達元へ直接連絡し電球を取り替えてもらって下さい。

 

パネルカバーについて

器械についてくるパネルカバーには3種類あり、以下のいずれかを渡されます。

洗い換えタイプ:柔らかい低アレルギー性の綿製品。カバーの透けている部分から光が出るように取り付けて下さい。パネルを赤ちゃんに巻き、マジックテープでとめます。汚れたら洗濯をしてまた使えます。

使い捨てタイプ:使い捨てのおむつと似た低アレルギー性の素材で、両側が透けています。パネルにこのカバーをかぶせ、光が出ている方を赤ちゃんのからだに当て、おむつをとめるのと同様にテープでとめます。

使い捨てベストタイプ:これは、新生児用の光線療法器に専用に使われるもので、上記の使い捨てタイプと同様の素材でできています。パネルはT字型の部分に縦に挿入し、その上に赤ちゃんを寝かせ胴体中央を巻きつけテープで固定します。

 

家庭光線治療に関する同意者

私の赤ちゃん ______________ (赤ちゃんの名前) は、新生児黄疸にて家庭で光線療法を受けるよう医師から指示を受けました。

この器械の使用法について詳しく説明を受けましたので、光線療法を始めることに同意します。

家庭光線療法の使用説明書を受け取りましたし、それを読むことに同意します。

家庭光線療法は入院して治療を受けるよりも経済的であり、治療中に赤ちゃんをだっこしたり授乳できるような利点があることを理解しました。

両親に下記の責任があることを理解します:

  • 病院に毎日連絡をとること
  • ビリルビン値の血液検査を受けること
  • 赤ちゃんの経過観察を注意して行うこと
  • 以下のものに関して記録をつけること:
    • 治療時間
    • 排尿回数 (濡れたおむつの数)
    • 便の数
    • 授乳の頻度と量

光線治療器はレンタルです。下記の項目に関し同意致します:

  • 器械が作動しない場合はすぐに製造元か配達先に連絡をとる
  • 器械は大切に扱い、配達された時の状態で保ち、返却する
  • 治療終了後は器械をすぐに返却する

親又は保護者の署名 _________________________

日付 ____________

 

記録について

医師の指示に従って治療を開始し、以下のとおり記録をつけて下さい。経過の録は、受診時医師に見せて下さい。記録用紙は、1ページにつき1日 (朝8時開始) です。

第1欄
1日の時間が書いてあります。治療が何らかの理由で中断された場合はその時間に丸を付けましょう。

第2欄
赤ちゃんの体温を記入して下さい。(医師から勧められた方法で体温を計るようにしましょう。)

第3欄
粉ミルクの場合は、量を記入して下さい。母乳の場合は、時間を書いて下さい。

第4欄
濡れたおむつを変える度に×印を付けて下さい。

第5欄
便の回数と色 (黒、茶色、緑、黄色)、及び量 (少、中、大) を記入。

第6欄
医師に知らせた方がよいと思われるコメントを記入して下さい。

記録用紙 (パンフレット内参照) の上部には以下の情報を書き入れましょう。

赤ちゃんの名前、今日の日付、血液検査の曜日と時間、及び、ビリルビンの数値、機械のメーター値、体温の計り方、光線の強さのスイッチ 強 (High)・弱 (Low)

治療後に記録を医者に提出して下さい。用紙の記入に関してのお問いわせは機械製造側/配達元にご連絡下さい。

機械製造/配達元
Healthdyne Technologies
1255 Kennestone Circle Marietta, Georgia 30066
無料電話 (800) 421‐8754 Fax (800) 253-3518

名前:_________________

日付:______________    治療開始後 ______ 日め

ビリルビン値:__________    採血日・時間:_______

器械のメーターの値:_______    体温測定部位:_______

光線の強さの設定:強 (High) _____ 弱 (Low) _____